手縫いのLEATHER GOODS

2009 年 12 月 8 日 8:01 PM /by Oguri

スーツ、靴、シャツ、銀細工、カバン、タイと自分が考える最高のモノが出来上がってきている。

お客さんたちにも喜んで頂いていると思う。ただ、納期が・・・・。

機械縫製のスピードにはとうてい追いつけない。

でも、手仕事に執着する自分がいる。それは何故か?

繊細かつ強靱なつくり、色あせるのではなく経年変化と共に美という言葉が

相応しいアイテム。

どんどん作れる職人が減少する中で、なんとかかんとか息を絶やさずにいる。

そんな中で、うちに足りなかったアイテム。メンズスタイルにおいて必要不可欠なアイテムなのに、なかった。

それが、ベルト、財布、名刺入れなどのLEATHER GOODSである。

まず、企画しなかった訳は、革!!!

考えても考えても、なかなか思いつかなかった。これで良いのか、これで良いのかと試行錯誤するのが続き、日々の忙しさにかまかけて、ずぼらしていた。

しかし、うちの新しいスーツのウエストのシェイプになると、今僕が使っているH社の長財布では、なんぼ内ポケットの位置を上にしたって、サイ腹のくびれに引っかかる。ポケットの口を前に持っていくのも限界がある。

何故、こうなるか。それは財布の縦のサイズが約1cmでかいのである。

突っかかるから、表にイヤなシワもでるしましてや裏地に負担がかかる。

負担がかかるとシルクの裏地の場合、そこが摩耗し裏地が裂けていく。

特に僕のように小さい身長だと、前身頃の縦の距離と横の距離が短いから、

ポケットの位置取りも大きい人のように配置がたやすくない。

なら、内ポケットを作らずカバン持てよって、話なのだが仕事の話以外でカバンを持っていくのは、僕にとっては自殺行為である(昔、カバンに現金000万円入れてて落とした経験より笑。 まぁ、いい人が拾ってくれていて助かったのだが)

でそれ以来、財布、携帯、ペン、名刺入れ、ライター、タバコ、で、チケットが必ず収まる身返しの仕様にしている。僕にとって、スーツは

ある意味カバンみたいな物である。

でいて、くびれの利いたダンディーなシルエットを出すのに一役買うのが

財布や名刺入れの隠れた名脇役達である。

今回の財布、名刺入れの醍醐味は薄さ、サイズ、高級感、手縫い、劣化速度に気を配って企画。

まず、革!!!一日に何度も手に持つ物であるから、キズがつきやすい。

そして、スーツの裏地の劣化を防ぐ為、渋鞣しは絶対ダメ!!!(キュプラやポリエステルなら大丈夫)

ポケット口もシルクなので油が付くとそこがすぐに摩耗しすり切れる。勿論、名刺入れ、ベルトも同じ事。

スーツやベストの裏地に擦れるから、全く持ってNG

そう言うわけで、クロム鞣しで、しぼ革で色数があり、手縫いに向くものまぁ、なかった。

行き着いたところが、WEINHEIMER WAPROLUX !!!

Sinnerの場合赤がないとはじまらない!!!だって、あれだけ靴も赤って!!!

展開色は、黒、赤、白、キャメルの4色。

次に高級感。結構なお値段する財布でも、札入れの中やポケットの中は、

共革ではない事が多い。実際僕の使っているのもそうなっている。

いつも、そこがみみっちい感じがして僕は萎えていた。で、今回は極限まで薄く透いて、札入れポケットをわさでとることにより、一つのパーツとして確立出来た。わさでとっているから変な貼り合わせにならずかつ縫いもきっちり

かかっているので、問題はない。

右と左のサイズも変え高さを9cmに!!!左右のバランスを変えることで、9㎝

を保った。その9㎝を保つ為、力点に芯を入れてまがりを良くしている。

中を赤にしているのは僕の好みである。個人個人が、色々な組み合わせを考えて

もらえばいいですね。

スペックは縦9cm、横17.6cm、マチは最大1.2cm

カードポケット× 6、札入れ×1、ポケット×3

とコンパクトにまとめました。

 名刺入れは、容量、格好、出し入れのし易さを考え、箱縫いにしている。

勿論この縫いは手縫いでしか存在しない。(ミシンでいっているものは、ステッチか利いていない。ダミーステッチである)

うちのスーツなら、身返しの名刺ポケットにきっちり収まるサイズである。

(これも中が赤なのは、僕の好みです。

開けた時に意外性があることが良いかなと)

サイズは縦9.6cm、横6.2cm、マチ1.6cm

いわゆる普通の名刺なら約40枚収納できます。

 ベルトは、ズーッとお客さんから求められてました。

これも、上で述べた理由で展開していませんでした。

靴に合わしてええベルトを探そうとも中々ないでしょ。

そして、ベルトの幅!!!

通常、スーツのパンツの帯幅は、3.5cm。これに合わすなら僕の考えるバッチリな

ベルトの幅は、3.3cmである。このベルト幅なら、ちょうどスーツの帯が隠れる。

ですが、世間一般のプロダクトは、3.5cmと3cmのベルトの幅がほとんどである。

それは、何故か?持論だが、金具を展開するにあたり3.3cmと3.5cmではあまり違いがないと考え、違いをつけるために3cmと3.5cmにしたのであろう。

そんなに、大きな違いはないが、どうせ作るならきちんとしたサイズが良いに決まっている。

そして、プレートタイプのバックルを展開しているのは、用途に応じ組み合わせを変えて頂きたいからである。

色んな組み合わせが出来るのも楽しいし、リバーシブルとなるとコーディネートも二倍にある。色違いであるが、表裏の革が一緒ということは、革の強度が同じ

である。これも、劣化を防ぐ一つの方法なのです。(曲を考えると腰裏は柔らかい革や滑りにくい革を使用するのだが、腰に巻くのであれば曲も急激ではないので、あまり影響はない。)

とこんな感じで、Sinnerの展開アイテムに幅が出来ました。

これからも、宜しくお願いします。

 

new line

2009 年 12 月 8 日 6:49 PM /by Oguri

Bespoke (誂え、Order )の道に進み、早9年。

この道のりの中、工場生産でのBESPOKE を経て、

そして師匠に出会い、ハンドメイドのBESPOKE に移行していきました。

僕自身も自ら針を持ち、職人の技術を修得し、縫い上げています。

そうして、Sinner LineとOguri Lineという二つのLineを設けることが

できたのです。

                                    

九年目にして、ふと昔話をしていたときの事です。

”昔から比べると、技術も価格も上がったな〜。

これやったら、昔の僕ら 手ぇ〜でへんな〜。”って。

確かに!!!

僕が店を始めたのが26歳。

服が好きで、技術が好きで、いつか最高のスーツを

作れる店になってやろうという野望を抱いていた頃。

やっと、トータルで提供出来るようになった。

そして、スーツが格好いいと言うことをもっと色んな人達に知っていただきたいと言う思いがこみ上げてきた。

Sinner LineとOguri Lineでは、納期の問題、金額の問題がある。

納期においては、最低三が月の期間が必要だし、金額においては30万強からのスタートになる。僕が二十六歳の時に、この待ち期間と金額を受け入れ頻繁に注文できただろうか?

そんな事を考えているとき、今コンビを組ましてもらっている工場のことを思い出し早速、連絡。型紙を製作して、いざ工場へ!!!

工場の型紙とは、全く違う。あくまでも、Sinner Line、Oguri Lineのシルエット、運動量が必要不可欠である。

縫製面での追加や、裏地のきせのとり方を話し合いサンプルを製作。

今回のSKB Lineは、シルエットの良さ、運動量、買いやすい価格という三つの

キーワードをモトに企画しました。不要な飾りなんかは全てオミットし

結果、納得していただけるモノが出来たと思います。

(始めた当初は、パンツの腿や渡り幅でミスを犯しましたが、今では理由も分かり

大丈夫)

そんなこんなで始めたんですが、今の世の中はどうだろうか?

大手企業の努力(?)により訳が分からない価格の衣類がはびこっている。

ユニ○ロやH○Mが悪いとは言わないが、騒ぎ過ぎだろう!!!

あの値段帯を購入することは、昔はいわゆるかっこ悪い事であった。

それが今や、当たり前になり、低価格のもので客を釣る方法が、企業側の

餌となっている。

なんかおかしくないこの状況!!!

エコ、エコと世界各国でひっきりなしに騒ぎ、どの企業もエコ、環境問題と歌っているのにも関わらず、大量生産、大量消費を促している。

なんて、矛盾しているのだろうか?

よく考えて見て下さい、安価な商品を作る為には、どうするか?

素材を大量にタタキ買い、大量発注する。そして、低賃金の国で生産する。

で、出来上がったのが一本800円のジーンズである。

この、ジーンズの価格の中にも、莫大な広告費も入っているんですよ!!!

一体、何万本作って、どんだけの消化率をかんがえているんでしょうかね。

スーツに至っても、二着2万円とか、3万円とか。それでいて、CM広告や新聞広告などを大きく打ち、しかもすばらしい技術やなんとかと歌っている。

せめて、メディアにでかでかと出すのであれば、女性の上着の袖丈くらいキチンとあわさなあかんでしょ!!!

男に関しては、上着丈が寸足らずやし・・・・。

寸法くらい合わそうよ!!!

モノを作ることにおいて、あまりにも低価格に走り過ぎている。

価格が、安くなる事は、機械の開発や躍進により生産スピードが上がり、結果として、生産数が上がる。

しかし、キチンと最低限の機能を損なわず作るには、人の手の技術が必ず不可欠である。

それを押しのけ価格のみの宣伝で、人々を誘導するのは洗脳してるようにしか思えない。

価格が安い高いは、個人差が必ずある。そのものを購入する際の物差しをしっかり自身が測れる人間にならなければならない。

自分が購入したモノを自信を持って、後世に伝える事が果たしてできる人が一体どれだけいるであろうか?

自分のジーさんや親父が着ていたスーツやねんって、自慢できる事ってものすごく大事なことではないだろうか!

今の企業の考え方は、世代を超えたバトンタッチを全く考えていない!!!

だから、文化が伝わらないのである。文化が、若い世代に伝わらないということは、国が滅ぶんですよ!!!五年や十年の存続だけを考え、これで売れなくなったらまた次へ。

そんな、消費だけでは、何も生まれないし、何も守れない!!!

今、私たちがすべき事は、このすばらしい地球を後世に残し、私たちが持てる知的財産、すなわち技術や文化を伝えることにある。

その為の教育、教養、知識を得る勉学を個々が行うこと!!!それが、今必要な事ではないでしょうか。

金額の問題ではなく、誰もが幸せになる為のもの作りがこの殺伐とした時代に、必要であるとはおもいませんか?

手で作るのか、機械で作るのかという問題よりも、確かなもの作り。企業が自信を持って、お客様に伝える事のもの作りこそが大事である。

マーケティングにばかり気をとられたもの作りでは、人を幸せにすることなんかできない。

なぜ、多くの大企業が気付かないか不思議である。

自らの手で自らの価値を下げているのを気付かない事こそ滑稽なことはない。

今このようだ金融危機の時代だからこそ、自国での生産を促し、諸外国に認めて

もらえる”モノ”を創り上げ、自国のポリシーを確立することが大事ではないだろうか。高いか安いかという価格云々ではなく、技術と美学が連動した誰もが憧れ、主張出来るもの作りが大切であると、僕は考えています。

このへんてこな時代、前進あるのみと考えてしまう!!!